ふるさとだより


神話から読みとれるもの

昨日2月11日は建国記念の日。『日本書紀』にある初代天皇・神武天皇が即位したとされる日に由来しています。
神道学・日本古代史研究の第一人者として知られる高森明勅(国学院大学講師)さんが語った「日本人なら知っておきたい“日本建国の物語”」がありましたので、一部紹介します。

“日本神話の大きな特徴の一つは、有機的な秩序を持った多神教である点です。登場する神々はそれぞれ役割を担っていて、面白いことに重要な役割を担う神々ほど、最初は不完全で出来損ないの存在として描かれています。
そして、その不完全な神々は、紛糾やトラブルを潜り抜ける中で大きく成長していくのです。
日本神話は、神々の成長物語という一面があるといってよいかもしれません。
中でもその典型は、「因幡の白兎」で知られる大国主神(おおくにぬしのみこと)でしょう。
大国主神は最初、オオナムジの神という名前で登場します。
多くの兄弟たちの従者だったオオナムジの神は、様々な試練を経ながら、やがて偉大な「国の主」に成長していくのです。
大国主神は兄弟神たちの従者だった頃、因幡の八上比売命(やかみひめのみこと)に求婚しようとする兄弟神の
最後尾に荷物を背負わされて、トボトボと歩いていました。
途中、鮫に皮を剥がれた兎を目にし、可哀相に思った大国主神はこの兎を助けます。
兎が「八上比売命と結婚するのはあなたです」と言って、実際そうなったため、兄たちは怒り、大国主神を罠にかけて殺そうとします。
母親は3度も殺された大国主神を助け、義父である須佐之男命(すさのおのみこと)がいる
根の堅州国(ねのかたすくに/地下の国)へと逃がします。
ここで大国主神は須佐之男命の娘、須勢理毘売命(すせりひめのみこと)と結婚。
須佐之男命から数々の試練を経ながらも、生大刀(いくたち)、生弓矢(いくゆみや)、天沼琴(あめのぬごと)
という3つの宝器(レガリア)を手に入れます。
地上の国に戻った大国主神は、このレガリアの大刀と弓矢で兄たちを追い払って、神々の協力を得ながら国造りを完成させていくのです。
ここにも苦難を乗り越える人生の知恵が示されています。
大国主神は兄たちの下にいる限り従者のままだったでしょう。いくら頑張っても、この力関係は乗り越えることができなかったはずです。
しかし母の助言で根の堅州国に行き試練を経験することで兄たちを凌駕する力を得ていきます。
須佐之男命が与えた試練も大変なものでした。
大国主神は蛇やムカデ、蜂のいる部屋に閉じ込められたり、野原に打ち込んだ矢を取ってこいと言われて火で包囲されるなど
数々の試験を一つひとつ知恵を働かせながら克服し、やがて須佐之男命のパワーを象徴する3種類のレガリアを手にしていくのです。
そういう大国主神に、やがて須佐之男命は地上の「国の主」になれと祝福します。
よく知られるように須佐之男命は知恵を使って八岐大蛇を退治した神様です。
大国主神はいつの間にかそれをも上回る知恵を備えていました。
大国主神は厳しい試練を通して自分を磨き上げたといってもいいでしょう。
もう1つ、大国主神の成長をもたらした背景には、地上における危機を救った母親の存在がありました。
母親の深い愛情と父親の厳しさ、この2つがともに大国主神の成長を促したところに、
日本神話の人間理解の深さを感じずにはいられません。”

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