ふるさとだより


論語の活用

『論語』が、“脳のいい使い方を養う”と、篠浦伸禎(都立駒込病院外科部長)氏と、世界に先駆けて「ヒト・レニン」遺伝子の解読に成功したDNA解明の世界的な権威・村上和雄さんとの面白い対談記事があったので紹介します。

村上 覚醒下手術と『論語』がどう結びついたのですか。

篠浦 覚醒下手術で患者さんの反応を確認しながら手術をするようになって一番驚いたのは扁桃体(ヘントウタイ)です。

扁桃体というのは側頭葉の中にあるんですが、手術をしながら右の扁桃体に近づくと、
患者さんがものすごく攻撃的になるんです。普段おとなしい若い女性でも怒鳴り出す。

逆に左に近づくと眠くなる。つまり逃避的になるんです。

僕はそれを見て、どうも人間の精神というのは、脳の一つの法則性に基づいているんじゃないかと思ったんです。

さらに最近分かってきたことは、脳の真ん中に帯状回(タイジョウカイ)というのがあって、そこが扁桃体をコントロールしているんです。

突然キレたりパニックになったり、要するに動物的な本能を司る大脳辺縁系(だいのうへんえんけい)が暴走するのを防いで、人間的な理性を司る大脳新皮質とのバランスを取るようにしている。どうも心というのはそこと深く関係しているようなんです。

村上 あぁ、動物的な脳と人間的な脳のバランスを取っていると。

篠浦 ええ。扁桃体が深く関わっている動物的な脳は、食欲、性欲といった生存のために必要な基本的欲求を
   司っていますからとても重要です。しかし、人間的な脳とうまくバランスを取らないと、良識的な社会生活  を営めません。そこを帯状回でしっかりコントロールするということは、要するに『論語』に代表される人間学を学ぶことと深く関係していると僕は考えたわけです。

村上 なるほど、脳のバランスを上手く取るために『論語』を学ぶ必要があると。

篠浦 例えば『論語』の説く「仁・義・礼・智・信」を修めることは、
   本能的な欲望や衝動に突き動かす動物脳をコントロールすることに他なりません。

「仁・義・礼・智・信」をしっかり修めれば誰からも尊敬されますが、それは脳のいい使い方を養えということでもあるわけです。ですから、『論語』を学ぶことは日本的な生き方にすごくフィットすると思うんです。

村上 最近青少年の犯罪が増えているのは、脳の問題とも関係がありそうですね。

篠浦 あれは扁桃体の問題だと思います。異常を起こしてコントロールできなくなっているんです。

例えば、この間の川崎の事件で捕まった少年も、カーッときて見境なくやったわけでしょう。

あれは扁桃体が活性化され過ぎて、脳全体が巻き込まれたわけです。

扁桃体というのはものすごい力があるので、それに巻き込まれると脳全体がどうしようもなくなるんです。

『論語』は、その扁桃体をコントロールする学問と言えます。
昔の人は『論語』を勉強したり、あるいは武士だったら厳しい剣の修業を通じて、動物的な脳をコントロールすることを完璧にやっていたわけです。(以下略)

 

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