ふるさとだより


ある新聞のコラムより 

32歳のその女性は実家に帰省する為、1歳の幼子を連れて新幹線に乗った。自由席の車両に乗り込んだが、車内は満席だった。リュックを背負い、スーツケースを持ち、さらに子どもを抱いていた。    女性はデッキに座り込んだ。そんな彼女に「こっちにいらっしゃい」と声をかけた女性がいた。案内されたのはグリーン車だった。「ここに座って」と言って切符を交換し、その人はデッキに立った。

実家に着いて女性は車内での出来事を母親に話した。

その3か月後のことである。今度はその女性の母親が上京する為、新幹線に乗った。自由席の車両に乗り込むと、席が一つしか空いていなかった。後からベビーカーを押す若い女性が乗り込んできた。彼女はためらうことなく、その若い女性を手招きして、一つしかない席に座らせた。「娘が受けたご恩を少しお返しできた」と思った。

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