ふるさとだより


ある新聞のコラムより -2-

とある病院に入院していた70代の女性の話だ。

ちょうど花見の時期だった。ある日、嫁に行ったお孫さんがひ孫を連れてお見舞いに来た。お孫さんの手には桜の枝が挿してある花瓶があった。自宅の庭に咲いていたのを少し切って持ってきたという。女性はベッドの上から花見をしながら、孫のやさしい気持ちをしみじみと感じた。

次の日、病室に入ってきた若い看護師が、こんな頼みごとをした。「その桜を貸して下さいませんか?」訳を聞くと「ほかの部屋の患者さんにも見せてあげたいと思いまして・・・」

女性は「そうだ、この病院には私の他にも桜を見られない人がたくさんいるんだ。それなのに自分だけ喜んで…恥ずかしい。」

しばらくして看護師が戻ってきて言った。「皆さん、喜んでくれましたよ」

同じフロアの病室を訪ねて、お一人お一人に花瓶の桜を見せて回ったそうだ。忙しさの合間を縫ってこんな心配りをしてくれる看護師がいたことに、女性は胸が熱くなった。

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