ふるさとだより


高い山を乗り越えて初めて事は成る

昨年に引き続き、日本人で23人目となるノーベル賞を、北里大学特別栄誉教授の大村智さんが見事受賞されました!
東京都内の夜間学校の教師から猛勉強の末、30歳で北里研究所の研究員になられたという大村さん。
周囲からは「この経歴ではあまり将来性がない、教師を続けて将来は校長にでもなったほうがいい」
と言われていたそうですが、高い志を持ち続けたことで、研究者として大輪の花を咲かせました。
大村智(北里研究所名誉理事長)氏のインタビュー記事(2012年)を紹介します!
  
“──大村さんの開発された薬によって、世界で2億5,000万人もの人が病気から救われているそうですね。
それは「イベルメクチン」といって、もともとはメルク社(米)と共同で家畜やペットの寄生虫病の特効薬として開発して、
世界中で使われているものです。それが人間の病気にも使えることが分かり、WHOが注目したのです。
例えば疥癬(かいせん)といって、老人ホームなどに多い皮膚病がありましてね。
患者さんからすぐ看護師さんにも染してなかなか治らないんですが、この薬を一回飲むだけでピタッと治るんです。
皮膚科領域の革命だといわれています。
この薬によって、熱帯地方によくあるオンコセルカ症という目が見えなくなる病気や、リンパ系フィラリア症といって
脚が象みたいに太くなる病気がほとんど感染しなくなって、WHOも2020年には撲滅できると発表しました。
──大変なご努力の賜物でしょう。
研究そのものはそんなに難しくはないのですが、何を考えて取り組むかということが大事です。
そういう意味で僕は、人があまり考えないことで世の中の役に立つのが自分の使命だと思い、
人がやっていないようなことに絶えず挑戦してきました。
このイベルメクチンも、我われが発見した世界で唯一の微生物がつくる化合物から開発した薬です。
これ以外にも創薬に結びつく化合物を含む新たな460種類の化合物を発見するなど、
世界で最初に手掛けた研究が多数あります。
とにかく僕が携わっている化学や微生物の分野では、創造性が大事で人真似は絶対にダメ。
もちろん学問ですから先人の業績を勉強することは大事です。
だけどそこから一歩先んじようという気概がなければなりません。若い研究者にもいつも言うんです。
新しいことをやりなさい、そうすると人を超えられるんだよと。
人真似ではどんなによくてもその真似をした人のレベル止まりです。
失敗を恐れず、新しいこと、人がやらないことに挑戦してこそ人を超えるチャンスを掴めるんです。
(略)
何かを成そうという時には、ネックになることがいろいろあるものです。
だからダメではなく、高い山を乗り越えて初めて物事は成せるんです。
お金がなければいかにお金を集めてくるか、人がいなければいかに育て、活用するか。
与えられた場で自分の役割を果たすことは大事です。
しかしただその場に甘んじているのではなく、そこを乗り越えて、自分でなければ
できないところを見せなければいけないと思います。
そういう気概で歩んできた結果、化学者としては一流でも二流でもない僕が、
一流の化学者以上の実績を積み上げることができました。
先年、102歳で大往生された松原泰道ご老師に僕は大変懇意にしていただいていました。
そのご老師からいただいた「生ききる」という色紙が自宅の仏間に飾ってあります。
僕はこれからいよいよこの「生ききる」を実践していきたい。
後進を育て、独自の新薬の開発を通じて社会に貢献していきたいですね。”

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