昨日、「茅の輪」が、「蘇民将来」の神話に出てくるということを書きましたが、その蘇民将来とはどんな神話か触れたいと思います。神話は通常『日本書紀』や『古事記』に書かれていますが、以下は『風土記』(備後国)にあります。口語訳は松浦光修(みつのぶ)氏『やまと心のシンフォニー』よりです。
“むかし北の国にいた武塔神(むたのかみ)が、南海にいる神の娘のところに通っていらっしゃったが、あるとき、帰る前に日が暮れてしまった。その場所に蘇民将来と呼ばれる兄弟がいた。兄は貧しく、弟は裕福であったから、武塔神は、はじめに弟に宿を借りようとされたが、弟は宿を貸さなかった。しかし兄は快く宿を貸し、栗のご飯でおもてなしをした。それから何年もたった頃、武塔神は、帰り道に兄を訪れ、こうおっしゃった。「私はお礼がしたい、おまえの子や孫はいるか?」兄が「妻と娘がいます」と答えると、武塔神は「茅で輪を作って、腰のあたりにつけておくがよい」とおっしゃる。そのとおりにしたところ、その夜、兄の娘一人を除いて、兄弟の一族全員が死んでしまった。そして生き残った娘に、こうおっしゃった。「実は私はスサノオの神である。これから流行病がおこったら、おまえは“蘇民将来の子孫です”と言い、茅の輪を腰につけていれば、その流行病から逃れられるであろう」と。”
今でも伊勢の町の正月のお飾りは“蘇民将来子孫の家”というのを一年中飾っておく家が多いはずです。当八幡宮でも、例年この“蘇民将来子孫の家”、と“笑門”の二種を伊勢より取り寄せて、園や八幡宮の入口の門にはこのお飾りがあります。