ふるさとだより

「迷った時はお天道様が喜ぶ道を選ぶ」

2015/01/27

一昨年、起業から僅か3年で地球温暖化防止活動環境大臣賞を受賞した星子文(ほしこ・あや)さん。
いま環境ビジネス界で最も脚光を浴びている若手女性経営者です。
地元の熊本から自然が失われゆく中、一念発起し、33歳の時にバイオディーゼル燃料を精製する事業をスタート。
しかし、その道のりは決して順風満帆ではありませんでした。その星子あやさんの記事を紹介します。

≪私は子供の頃から両親に、「判断に迷ったら、その行為が美しいかどうか、そしてお天道様の喜ぶほうを選びなさい」
と育てられました。儲かる、儲からないじゃないんです。
誰もやらないなら、自分でやろうと思い、平成21年、33歳の時に起業しました。
私は本当に人のご縁に恵まれていて、同級生には水道屋さんがいたり左官屋さんがいたりして、
みんなが手伝いに来てくれました。
「新品を買うと高いから、 使えるところは廃材を使おう」と考えてくれて、本当に最低限の借り入れで
始めることができました。
ただ……、私、簡単にできると思っていたんですよね。
廃油なんてどこにでもあるし、みんな処分に困っているわけだから、うちがそれを回収して、エネルギーに変える。
しかも環境にもいいんだから、みんなが喜ぶと思ったんです。
ところが、始めてみたら大変でした。何が大変って、思いもよらない抵抗が……。
・・・廃油は産業廃棄物を取り扱う業者が   処理料をもらって回収し、それをまた転売するという、
   二重の利益構造になっていました。
要するに既得権益を得ていた業界に私のような新参者がエコ活動を旗印に入ってきたので、面白くないですよね。
せっかく回収した廃油のドラム缶がいつの間にかなくなっていたり、
夜一人で事務所にいる時に怖い電話がかかってきたり。
また、ある企業から「話がしたい」という電話をいただいたので、私はてっきりお取り引きの話だと思って、
「やったぁ!」と、たくさんの資料を持って訪問したら、10時間近く帰していただけませんでした。
「手を引け」とか散々言われましたが、借入金もあるし友達も手伝ってくれて、こんな私と一緒にやろうという社員もいる。やめられるわけがないでしょう。
夕方、日も暮れてきた頃、「すみません、やめられません。社員が心配しているので帰ります」
と言って出てきました。
毎日がそれとの闘いで、いろいろ考えて眠れない日が続きました。
自分は経営者の器じゃないんじゃないか。事業をやったのは間違いだったのかもしれない。
いや、負けちゃいけない、経営者なんだから強くなくちゃ……。
そんな日々が1年近く続いた頃、友人に誘われて福岡まで『降りてゆく生き方』という映画を見に行きました。
この映画を見たら、もう、涙が止まらなくなって……。
自主上映だけの映画で、たくさんのメッセージが込められている作品なので一言でお伝えするのは難しいのですが、
お金のために人も自分自身も騙して生きてきた主人公が、人の優しさや温かさ、命の大切さに触れて、
生き方が変わっていくのです。
それを見て、私はもともとそういう部分を大切にして生きてきたし、だからこの事業をやりたいと思ったのに、
経営者だから強くなきゃ、闘わなくちゃと、必死で違う自分をつくろうとしていたことに気づいたんですね。
私らしく生きようと思いました。それでダメならそれまで。
お天道様が喜んでくれる事業なら、私らしくやっても、きっとうまくやれるはずだと思いました。・・・≪以下略≫