昨夜、世界的な免疫学者の多田富雄氏が、この4月に逝去されたことから、9年前脳梗塞で倒れた以降の軌跡を番組(BS3)で取上げていました。世界の第一線で活躍されていた多田氏は出張先の金沢で倒れ、一命を取り留めたものの、声を失い右半身不随になってしまわれた。しかし、それから左手でキーボードを打つことを覚え(それまでは手書き)、執筆活動を続けていかれたのです。それまでの研究で、免疫細胞には異物として排除するものもあれば、受け入れるものもある、すなわち“寛容”というものがあると言うのが彼の持論だったそうです。これを、体が利かなくなった彼は、なんと彼の書『寡黙なる巨人』の中で、「自分の中に生まれつつある新しい人を巨人と呼んで受け入れよう」と考え、「寛容」を実践していくことに凄い!と感動しました。そればかりか、書籍のみならず、“能”の脚本の執筆活動や、2006年に厚労省が導入した「リハビリ日数期限」に対しても積極的に反対運動をしたりと、前向きな生き方に大いに勇気をもらいました。科学者でありながら、人間としての生き方にも深く追求されたことにも感動し、人間には“必要なことが起こる”んだ、と言うことも改めて思いました。つまり、病に倒れたことで、生きることの意味をより深く掘り下げることができ、人々に生きる勇気を与えるという“お役目”だったのだろうと思えました。故・多田富雄氏は茨城県結城市出身です。
その人に必要なことが起こる
2010/07/16